天然痘

天然痘とは

 天然痘とは、天然痘ウイルスを病原体とする感染症の一つである。

 非常に強い感染力を持ち、全身に膿疱を生じ、治癒しても瘢痕を残すことから、世界中で不治、悪魔の病気と恐れられてきた代表的な感染症。時に、国や民族が滅ぶ遠因ともなってきた。日本では、藤原四兄弟の相次ぐ死により、一時国政が大混乱に陥った。

疱瘡、痘瘡ともいう。医学界では一般に痘瘡の語が用いられた。

予防・治療

 「種痘」というワクチン接種による予防が極めて有効。感染後でも4日以内であればワクチン接種は有効であるとされている。また化学療法を中心とする対症治療が確立されている。

種痘

 天然痘が強い免疫性を持つことは、近代医学の成立以前から経験的に知られていた。いつ始まったのかはわからないが、西アジア・インド・中国などでは、天然痘患者の膿を健康人に接種し、軽度の発症を起こさせて免疫を得る方法が行なわれていた。この人痘法は18世紀前半にイギリス、次いでアメリカにももたらされたが、2パーセントほどの死亡率を示すなど、安全性に問題があった。

18世紀半ば以降、ウシの病気である牛痘にかかった者は天然痘に罹患しない事がわかってきた。その事実に注目し、研究したエドワード・ジェンナー が1798年、天然痘ワクチンを開発し、それ以降は急速に流行が消失していった。

あまり一般には知られていないが、日本の医学会では有名な話として日本人医師による種痘成功の記録がある。現在の福岡県にあった秋月藩の藩医である緒方春朔が、ジェンナーの牛痘法成功にさかのぼること6年前に秋月の大庄屋・天野甚左衛門の子供たちに人痘種痘法を施し成功させている。福岡県の甘木朝倉医師会病院にはその功績を讃え、緒方春朔と天野甚左衛門、そして子供たちが描かれた種痘シーンの石碑が置かれている。